最近、「心脳マーケティング」という本を読みました。
心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす(Amazon)
アカデミックな内容で読むのに結構苦労しました…。それはいいとして、この本も含めて最近インサイトや消費者心理に関する本を読んでいるのですが、これらの本で紹介されているのが95対5の法則というもの。
人は1日の中でもたくさんの決断をしますよね。朝起きてから、朝ご飯で何を食べるのか、汝の電車に乗るのか、乗車する車両はどこか、電車でどの席に座るのか、会社に行ってからどの仕事から手を付けるのか etc.
そういった行動の95%は無意識にしており、意識して決断しているのは僅か5%だそうです。
インターネット広告のクリックは「意識した行動」か?
これはインターネット上での行動にも当てはまると、私は思います。そう考えたときに、検索連動型広告で広告をクリックするという行為は、無意識でしょうか?意識した行動でしょうか?
私は、ほとんどは無意識なんじゃないかと思うんですね。
いちいち出てくる広告を隅まで見比べて、「よし、この広告をクリックしよう」なんてこと、ほとんどないですよね。
なんとなく自分の求めている商品・情報に合いそうなものをクリックすることが多いのではないでしょうか。
この前提を理解しておくことが結構大事なんじゃないかと思ってます。
検索ユーザーの目線で考える
どんな仕事でも「消費者目線で考える」というのはすごく大事なことですよね。
名著「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」の著者でUSJの元CMO森岡さんも、著書の中で”USJが消費者視点の会社に変わったということが、V字回復の最大の原動力”だとおっしゃっています。
広告運用者としても、「クライアントの消費者の視点を持つ」ということが大事なのはもちろん、「インターネット広告を見る消費者の視点に立つ」ということが非常に大事です。
ただ、これが難しい。
日常の業務や成果を追い、運用型広告の仕組みについて詳しくなり、広告を作ればつくるほど、消費者目線からは遠ざかっていくものではないかと思います。
この前私もインターネット界隈以外の友人と話していて、Instagram広告を広告として認識していないという話を聞いて、「そうか自分がこの業界にいるから広告かどうか敏感になっているんだなー」と気付いたり。
広告運用・SEM業界にいると、自分が検索する時もつい「どういう広告が出てくるか」とか「そういう訴求するんだ」とか、これはSEOでこれは広告で、広告はクリックしないようにしよう、とか意識しちゃいますよね。
どうしても普通の消費者目線からは離れてしまう。
そうした中で次第に「消費者は広告文をしっかり読んだ上で、広告をクリックする」と思ってしまっていませんか?と思うわけです。
前述の「心脳マーケティング」の中で「マーケティング使用理論の6つの誤り」として下記が挙げられています。
1. 消費者の思考プロセスは筋の通った合理的・直線的なものである
2. 消費者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することができる
3. 消費者の心・脳・体、そして彼らを取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として調査することが可能である
4. 消費者の記憶には、彼らの経験が正確に表れる
5. 消費者は言葉で考える
6. 企業から消費者にメッセージを送りさえすれば、マーケターの思うままにこれらのメッセージを解釈してくれる
ひとつひとつ、かなり考えさせられる内容ではあるんですが、
1「消費者の思考プロセスは筋の通った合理的・直線的なものである」
6「企業から消費者にメッセージを送りさえすれば、マーケターの思うままにこれらのメッセージを解釈してくれる」
は特に今回注目しておきたいポイントです。
消費者は合理的に考えるわけではないし、メッセージは企業の思うままには解釈されない。これは検索連動型広告にも当てはまるのではと思います。
多分みんな、検索連動型広告なんてそんなちゃんとしっかり読まないですし、「なんとなく」でクリックしているんですよ。
※あくまでも個人の考えです。
以前WEB担の記事でアユダンテの寳さんが近いことを書かれていました。
「文才ない、書くのが苦痛……書けない人必見! リスティング広告文のやさしい書き方講座 | リスティング広告運用でビジネススキルも磨く | Web担当者Forum」より引用
リスティング広告の広告文は「強いニーズをもった少数のユーザー」が「チラ見する」前提で作るほうがうまくいきます。検索という行為の真っただなかで広告が目に触れるため、ほんの一瞬で目的をもったユーザーに自分ゴトであると捉えてもらうことが求められます。
完全に同意で、ほんとこれだなーと!ちなみに寳さんも著者の一人である「ネット広告運用“打ち手”大全」は非常に勉強になる広告運用の本ですので、こちらもおすすめです。(直接のご面識はありませんが、セミナーでお話を聞いたことはあります。)
なので、例えばディスクリプションの後ろの方で文言を変えてテストをしたり、文字数ギリギリまで訴求を詰め込んだりしても、大きなインパクトは期待できないでしょう。
じゃあ「なんとなく」でクリックされるなら、検索キーワード詰め込んで適当な広告を作ればいいのか?というと、そうではないと思います。
「なんとなく」にも理由がある
なんとなくでクリックすると言っても、無意識下でクリックするかどうかを決めている要因はあるはずです。
例えばランチを食べに行って、3つのお店が並んでいたとしてどの店に入るか”なんとなく”決めたとします。そういう場合でも、混雑状況はどうなのか、洋食か和食か、朝や前日に何を食べたかというコンテクストなどを元に判断をしています。
検索連動型広告の場合も同様です。無意識の中でどの広告が自分の求めている情報なのか?の判断を瞬間的にしています。
その「なんとなく」の理由を想像することで、成果の出る広告が生み出せるのでは?というのが今考えていることです。
広告をなんとなく選んでもらう=クリックしてもらう ために押さえておきたいポイント
私の考えるポイントをまとめてみました。「いやそれ当たり前じゃん」というツッコミはなしで何卒。
・検索したときの答えがありそうかどうか⇒検索クエリと広告文の一致度
・消費者が選ぶ際に重視するポイントが書かれているかどうか⇒購買決定要因を考える、検索意図を考える
・目に入りやすいかどうか⇒広告表示オプションなど
・シンプルでわかりやすい⇒シンプルな訴求、ひらがな・漢字・記号のバランス
・ハッとさせる⇒自分事化
以下でもう少し掘り下げます。
・商材と検索クエリがマッチしている(検索クエリに対する答えになっている)
前提としては、検索クエリと商材がマッチしているかということ。賃貸を探していて戸建ての広告が出てきても「違うな…」となりますよね。
当たり前ですが、実際に検索してみると結構微妙な広告が出ているのも散見されます。
・広告表示オプションちゃんと設定しとく
なんとなく目に入りやすい、というだけでクリックされやすくなるという部分も正直あるかなと。広告表示オプションをちゃんとフルで入れて、広告の表示面積を増やすのは、これも当たり前ですが大事かと思います。
・検索意図を入れる
ユーザーの検索意図は、検索クエリにそのまま表れるわけではありません。
例えば、賃貸マンションを探しているとします。同じ「東中野 賃貸」という検索クエリでも、いろいろな人がいますよね。
一人暮らしで1K出やすいところがいいという人もいるでしょうし、親子3人+ペットで3LDK以上ペット可物件を探す人もいるでしょう。
もちろん細かく「東中野 賃貸 ペット可」などの条件を入れて検索する方もいます。SEOであれば細かくカテゴリ分けし足りすると思いますし、広告でも動的検索広告でそのあたりはカバーすることもできます。
ただ、サイト構造的に難しい場合、検索意図の広い検索クエリでは意図を深堀りし、訴求していくと良いと思います。
・一瞬で見てわかりやすい
訴求を詰め込みすぎて結局よくわからないみたいな広告って結構あると思います。
私は、1つの広告を見る時間なんて1秒無いくらいだと推測しています。訴求てんこ盛り&文字数いっぱいの広告だと、自分の探している情報なのか?を判断するのに時間がかかるかなーという印象があります。
- 大事な内容はタイトル1で訴求する
- 出来るだけシンプルにまとめる
ということは大事ですね!
例えば、中小企業を対象とした広告運用代行を行っている場合、見込み顧客には下の広告文の方がクリックされやすい、ということもあるでしょう。
・ひらがな、漢字のバランス
なんとなく理解できるかということが大事なので、漢字ばっかりの広告は避けた方がいいかと思います。頭に入ってきにくいですよね?
面白半分で作りましたけど、やっぱ読みにくいですねw 縦書きならもはや漢文
記号の使い方もこれと似た理由で大事です。見やすく、認識されやすくするために、上手く使いたいところですね。
・商材によって異なる「購入決定要因」を入れる
商材によっては、購買決定要因ってこれ外したら話にならないよね、というものもあります。
例えば水漏れ修理であれば、今水漏れで困っている方が大半なので「すぐ対応可能」かどうかが肝ですよね。
あと、よく数字や価格を入れると良いということも言われますけど、これはケースバイケースだと思ってます。価格が購買決定要因になる商材とそうでない商材もありますし。
無意識⇒意識に引き上げる広告
最後に、もう一つだけ。
クリックは無意識の行動と書きましたが、無意識を意識的な行動に引き上げる方法もあるかと思ってます。
例えば「〇〇なあなた」というような呼びかけで「おっ!自分のことだ」と思ってもらえれば、その方のクリックは意識的にその広告を選んだ行動と言えるのではないでしょうか。こういうのはディスプレイ広告の方が多いと思いますが、それはまた別途書きたいと思います。
ユーザー目線大事ですよね!という話です
思ったより長くなりましたw
「そんなみんな広告文を理性的に、めっちゃしっかり見てるわけじゃないよね?」というのが言いたかっただけなんですが…。
まとめると、検索連動型広告のクリックは無意識、なんとなくでされているという前提を理解しておく。その上で、”なんとなく”の何故を考え、「なんとなくクリックされる広告」を作る、ということが大事だと思います!